富嶽百景のあらすじ「良い富士を見た」

      2017/05/14   文学

雪が積もった富士山
太宰治は昭和13年に富士河口湖町にある旅館に滞在していました。この頃の出来事を綴った私小説が「富嶽百景」です。

仕事に悩んでいたり見合い相手に対する気持ちを抱えながら、太宰治が富士山に想いを馳せる様子を描いた富嶽百景とはどんな内容なのでしょう。簡単なあらすじをご紹介します。

スポンサーリンク

太宰治「富嶽百景」のあらすじ

物語は、富士について語るところから始まります。

心機一転の旅立ち

昭和13年の秋、太宰は思いを新たにする覚悟で旅に出ます。鞄一つで甲府からバスに乗り、一時間ほどかけて辿り着いた御坂峠にある天下茶屋というところに滞在することにしました。

そこでは先に、井伏鱒二が仕事をしていました。

太宰がここへ来て数日経ち、井伏の仕事が一段落したある日、二人は三ツ峠に登ることにします。しかし、頂上についたものの、霧が深くて何も見えませんでした。

茶屋で休憩していると、その店の老婆が気の毒がって、そこから見える富士山の写真を持ってきて一生懸命に説明してくれるのでした。それを見た二人は微笑み、良い富士を見た、と思うのでした。

甲州での新たな出会い

それから二日後、仕事が一段落した井伏は峠を降りることとなりました。太宰は甲州までお共することにします。というのも、太宰はそこである娘とお見合いをすることになっていたのです。

そしてこの娘と結婚したいと決めます。

その後、茶屋に残った太宰の元を新田という青年が訪れました。彼は太宰を先生と呼び、文学談義を交わすようになりました。

結婚に向けて

太宰の結婚の話が進む中、故郷からの資金の援助は受けられないということが分かってきました。これはもう結婚を断られても仕方ないと覚悟を決め、そのことを甲州の先方に告白します。

しかし、相手の娘とその母親は反対もせず、愛情と仕事に対する熱意があればそれで良いと言うのでした。

甲府から帰ってからは、緊張からひどく肩が凝っていました。そしてその後二、三日は仕事をする気も起きませんでした。

富士山との別れ

寒さも厳しくなり、それに耐えながら仕事をすることももはや無意味に思えて、峠を下ることを決意します。

その前日、茶屋の椅子に腰掛けていると、二人の若い娘にカメラのシャッターを切って欲しいと頼まれました。

ポーズを取る二人をわざと外して、お世話になりましたと思いながら富士山だけを大きく写したのでした。

感想

仕事に行き詰っていた太宰が、富士を眺めながら様々な人と交流するうちに心が少し晴れやかになったという印象を受けます。

富士山を写すカメラ

最後に若い娘に頼まれて写真を撮る場面がありますが、ここで太宰は娘をフレームから外して富士山だけを写します。

機械が苦手な太宰はカメラを持たされますが、ちょっと動揺しています。そしてレンズ越しに娘さんを見ると生真面目にポーズを決めている姿を見ると、可笑しくて笑いそうになっているのです。

そのまま娘さんを外して富士山だけを撮ったのは、ちょっとしたイタズラ心だったのでしょうか。茶目っ気を感じさせる場面だと思います。

太宰の心理

富士に来る前の太宰の生活は乱れていました。首を吊ったり、情緒が不安定なため鎮痛薬である薬を常用して中毒状態になったりしていたのです。

しかしこの富嶽百景を書いていた頃から生活を立て直すことができて、結婚して数々の名作を生み出していきます。ただ残念なことに、良くなったかに見えた太宰の精神はまた不安定になったりを繰り返し、昭和23年に愛人と入水することになるのです。

この富嶽百景のころは、太宰にとってほんのひと時の安らぎを得ていたのかもしれませんね。

あらすじ一覧

PC記事下

スポンサーリンク

PC記事下の下

 - 文学